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先に結論を書きます。
- 賃貸か分譲かで、話す相手が全部変わります
- 分譲では管理会社は決定機関ではありません。決めるのは管理組合です
- 2026年4月、4分の3の分母が「全区分所有者」から「出席者」に変わりました
- 光ファイバーの敷設は、多くの場合4分の3ではなく過半数で足ります
- 通常総会は年1回。要望を出した月に決まることはありません
- それでも臨時総会は、区分所有者の側から請求できます
マンションのネットが遅い理由を書いたとき、最後に「建物所有者の同意が必要です」と書きました。この記事は、その『同意』の内側の話です。
要望を出したあと、誰の机を通って、何が決まると工事になるのか。管理する側にいるので、その経路を書けます。
まず、賃貸か分譲かを確認してください
ここを間違えると、話す相手を丸ごと間違えます。
| 決めるのは誰か | 要望が向かう先 | 必要な合意 | |
|---|---|---|---|
| 賃貸 | 建物の所有者 | 仲介会社または賃貸管理会社 | 所有者の判断だけ |
| 分譲 | 区分所有者全体=管理組合 | 理事会、そして総会 | 総会の決議 |
賃貸なら、決めるのは1人です。所有者が「やる」と言えば進みます。工事費を誰が持つかという話にはなりますが、合意形成の手続きはありません。
分譲はまったく違います。ここから先は分譲の話です。
個別に引く場合の窓口へ記事の後半・広告
分譲では、管理会社は決めていません
いちばん多い誤解がこれです。「管理会社に言えばやってくれる」は成立しません。
分譲マンションで共用部分をどうするかを決めるのは、区分所有者の集まりである管理組合です。管理会社は、管理組合から委託を受けて実務をしている立場にすぎません。
そして管理組合の中でも、理事会と総会は役割が違います。
| 何をするところか | 開かれる頻度 | |
|---|---|---|
| 理事会 | 議案を準備し、総会に上げるかを決める | 月1回程度が35.7%、2か月に1回程度が27.3% |
| 総会 | 実際に決議する | 年1回が89.9% |
理事会は決議機関ではありません。理事会が「いいね」と言っても、それは総会に議案を出す段階に進んだだけです。
頻度の数値は、国土交通省の令和5年度マンション総合調査によるものです。多くのマンションで、決議の機会は年に1回しかありません。
決議には2種類あります
共用部分に手を入れるとき、必要な賛成数は工事の内容で変わります。区分所有法が2種類を分けています。

| 決議の種類 | 何に使うか | 必要な賛成 |
|---|---|---|
| 普通決議 | 共用部分の管理に関すること | 出席者の過半数 |
| 特別決議 | 共用部分の変更(形状または効用の著しい変更を伴うもの) | 出席者の4分の3以上 |
条文はこうです。第17条第1項が特別決議を定めています。
共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。第五項において同じ。)は、集会において、区分所有者…の過半数…の者であつて議決権の過半数…を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各四分の三…以上の多数による決議で決する
かっこ書きに注目してください。「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」とあります。著しい変更を伴わないなら、特別決議ではありません。その場合は第39条第1項の原則に戻り、出席者の過半数で決まります。
つまり同じ「共用部分に手を入れる話」でも、4分の3が要るものと、過半数で足りるものがあります。
2026年4月、4分の3の分母が変わりました
ここが、この記事でいちばん伝えたいことです。

改正前の第17条第1項は、こう書かれていました。
共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する
「区分所有者及び議決権の各四分の三以上」です。分母は全区分所有者でした。
現行はこうです。
区分所有者…の過半数…の者であつて議決権の過半数…を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各四分の三…以上の多数による決議で決する
分母が「出席した区分所有者」に変わりました。あわせて「過半数の出席」という定足数が新しく置かれています。
普通決議も同じ形に変わりました。第39条第1項は改正前が「区分所有者及び議決権の各過半数」で、現行は「出席した区分所有者及びその議決権の各過半数」です。
出典はe-Gov法令検索の「建物の区分所有等に関する法律」です。現行は令和8年(2026年)4月1日施行の令和七年法律第四十七号による改正後の条文で、改正前の条文は同サイトの令和5年4月1日施行版で確認できます(2026年9月25日参照)。
欠席者は、これまで実質的に反対と同じでした
何が変わったのかを、言い換えます。
改正前は、分母が全区分所有者でした。総会に来なかった人は、反対票と同じ効果を持っていました。100戸のマンションなら、75戸の賛成が必要です。60戸が出席して全員が賛成しても、決議は成立しません。
改正後は、分母が出席者です。欠席した人はカウントされません。同じ60戸の出席なら、定足数である過半数を満たしたうえで、その4分の3にあたる45戸の賛成で決まります。
議案は通りやすくなりました。所有者の高齢化や不在化で総会の出席率が下がり、決議そのものが成立しなくなっていた実情への手当てです。
ただし「出席」には委任状が含まれます
ここは正確に書きます。総会の出席率には2種類あります。
| 平均 | |
|---|---|
| 委任状・議決権行使書の提出者を含む出席割合 | 88.5% |
| 委任状・議決権行使書の提出者を除く出席割合 | 24.6% |
国土交通省の令和5年度マンション総合調査の数値です。実際に会場に足を運ぶのは、4人に1人です。
そして委任状の提出割合が平均28.9%、議決権行使書が平均35.6%あります。この2つを合わせた分が、当日の会場にいない「出席者」です。
つまり改正後の「出席者の4分の3」は、88.5%のほうにかかります。議決権行使書をどう書いてもらうかが、結果を左右します。総戸数が大きいマンションほど会場出席率は下がるので、ここの比重はさらに増します。
光ファイバーの敷設は、多くの場合「普通決議」です
もうひとつ、知られていない事実があります。これがこの記事のいちばんの実用価値です。
国土交通省のマンション標準管理規約(単棟型)には、条文ごとのコメントが付いています。その第47条関係に、普通決議で実施できる工事の例が列挙されています。
オ)IT化工事に関し、光ファイバー・ケーブルの敷設工事を実施する場合、その工事が既存のパイプスペースを利用するなど共用部分の形状に変更を加えることなく実施できる場合や、新たに光ファイバー・ケーブルを通すために、外壁、耐力壁等に工事を加え、その形状を変更するような場合でも、建物の躯体部分に相当程度の加工を要するものではなく、外観を見苦しくない状態に復元するのであれば、普通決議により実施可能と考えられる
「普通決議により実施可能と考えられる」と書かれています。4分の3ではありません。出席者の過半数です。
しかも条件が広く取られています。既存のパイプスペースを使う場合はもちろん、外壁や耐力壁に工事を加えて形状を変える場合でも、躯体に相当程度の加工が要らず、外観をきれいに戻すなら普通決議でよいとされています。
同じコメントには、計画修繕工事として共聴設備の更新工事も普通決議で可能と書かれています。
これは国土交通省が示す標準的な考え方であって、個別の工事がどちらに当たるかを決めるものではありません。実際の判断は、工事の内容と、そのマンションの管理規約によります。ただし「4分の3は無理だから諦める」と考える前に、普通決議で足りる可能性を確認する価値はあります。出典は令和7年10月17日改正のマンション標準管理規約(単棟型)コメント41ページです(2026年9月25日参照)。
「4分の3」で諦めていた人が、いちばん損をしています
ここまでを整理します。
- 光配線化は、多くの場合普通決議=出席者の過半数で足ります
- 仮に特別決議になっても、2026年4月から分母は出席者です
- 総会の出席率は、委任状と議決権行使書を含めれば平均88.5%あります
つまり、以前より確実に通しやすくなっています。「管理組合の4分の3なんて集まるわけがない」という前提は、2つの意味で古くなりました。
要望を出してから、工事になるまで
とはいえ、時間はかかります。そこは正直に書きます。

| 段階 | 何が起きるか | どれくらいかかるか |
|---|---|---|
| 1 | 入居者が管理員やフロント担当に伝える | すぐ |
| 2 | 管理会社が内容を整理し、見積りを取る | 事業者の回答待ち |
| 3 | 理事会が議案にするか決める | 月1回程度が35.7%、2か月に1回程度が27.3% |
| 4 | 総会の招集通知が出る | 会議の2週間前まで |
| 5 | 総会で決議する | 通常総会は年1回が89.9% |
| 6 | 発注、工事 | 工事の内容による |
標準管理規約は、通常総会を「毎年1回新会計年度開始以後2か月以内に招集しなければならない」と定めています。招集通知は「少なくとも会議を開く日の2週間前」までです。
議案の要領も、この通知に書かれます。つまり総会の2週間前には議案が固まっている必要があり、そこから逆算すると、理事会はさらに前に開かれています。
要望を出した月に決まることはありません。最短でも、次の理事会と次の総会を待つことになります。
管理会社から提案が出てこない理由
「管理会社が何も言ってこない」という不満は、よく聞きます。これは怠慢ではなく、構造の問題です。
建物管理の現場にいて分かるのは、管理会社が物件に対して持っている裁量は、思われているより小さいということです。管理組合と直接やり取りできる物件はごく一部で、大半は他の管理会社から業務を受託している形です。受託している側は、提案を出す立場にありません。
もうひとつは原資です。共用部の工事にはお金が要ります。修繕の計画に入っていない支出を新しく作るのは、理事会にとって重い判断です。雨漏りや外壁のように待ったなしのものが先に並び、通信設備は後ろに回りやすい。
しかも回線は、壊れていません。遅いだけです。「困っている人がいる」ことが数で見えないと、議題としての優先順位が上がりません。
だから、動かすには外から議題を入れる必要があります。提案を待つのではなく、要望として上げる。ここが入居者にできることです。
臨時総会は、区分所有者から請求できます
年1回の総会を待てない場合の手段が、法律に用意されています。ここを知っている人は多くありません。
区分所有法第34条第3項は、こう定めています。
区分所有者…の五分の一以上の者であつて議決権の五分の一以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる
5分の1です。100戸なら20戸。4分の3を集める話ではありません。そして管理規約でこの定数を減らしている場合もあります。
さらに第4項が、請求したあとを定めています。
前項の規定による請求がされた場合において、二週間以内にその請求の日から四週間以内の日を会日とする集会の招集の通知が発せられなかつたときは、その請求をした区分所有者は、集会を招集することができる
請求から2週間以内に通知が出なければ、請求した区分所有者が自分で総会を招集できます。日数まで条文に書かれています。
標準管理規約にも、理事長が「理事会の決議を経て、いつでも臨時総会を招集することができる」と定められています。臨時総会は、制度として想定されている手段です。
総会を待てないなら
ここまでが正攻法です。ただし、すべての人が総会まで待てるわけではありません。待たずに動ける手段を3つ挙げます。
選択肢1|NTT東日本の特設窓口に要望を出す
NTT東日本は、光配線方式の設備(光スプリッタ)の設置要望を受け付ける特設窓口を開設しています。対象は「VDSL/LAN配線方式の集合住宅単位で設置している住戸のお住まいの方」で、建物の所有者ではなく住んでいる人が要望を出せます。
要望後は「NTT東日本のご確認・スタッフと、管理会社様・関連業者の皆様と3者協力して実現をめざします」とされています。ただし建物所有者の同意は必要です。詳しくはマンションのネットが遅いときの記事にまとめています。
管理組合と回線事業者の両方から入口を作ると、議題として動きやすくなります。
選択肢2|自分の部屋だけ個別に引けるか確認する
建物に備え付けの回線があっても、個別契約ができる建物があります。これは管理規約と設備の状況によります。引ける場合は、総会の決議を待つ必要がありません。
ここから先は広告リンクです。当サイトは窓口の順位付けをしていません。並び順は五十音順で、報酬額とは関係ありません。集合住宅で申し込めるかは物件によって変わります。申し込む前に、専有部への引き込みが可能かを管理会社へ確認してください。
選択肢3|工事をせずに済ませる
工事の許可が取れる見込みがないなら、コンセントに挿すだけのホームルーターがあります。ただし上りの速度が大きく落ちます。在宅で仕事をするなら、ここは無視できません。ホームルーターと光回線の比較に判断基準をまとめています。
回線を変えずに月々の負担だけ下げる方法もあります。備え付けの回線が対象事業者なら、スマホとのセット割だけを取れる場合があります。
管理組合に持っていくとき、揃えるもの
議題として扱われやすくするために、先に用意しておくものがあります。
- いまの配線方式と、実測の速度。有線で測った数字を出します
- 何が変わるのか。マンションタイプの100Mbpsから、ギガラインタイプの1Gbpsへ、という形で書きます
- 普通決議で足りる可能性。標準管理規約コメントの該当箇所を添えます
- 工事の概要。既存のパイプスペースを使えるか、外観に影響が出るか
- 同じ不満を持っている住戸がどれだけあるか。臨時総会の請求には5分の1が要ります
「速くしてほしい」だけでは議題になりません。理事会が総会に上げるには、議案の要領を書ける材料が必要です。そこまで用意されていれば、扱いはまったく変わります。
ネットと同じように建物単位で決まっているものに電気があります。一括受電のマンションでは電力会社を選べない話に書きました。
よくある質問
管理会社に言えば工事してもらえますか
分譲では、管理会社は決定機関ではありません。決めるのは管理組合の総会です。管理会社は議案の準備や見積りの取得を担当します。賃貸なら、決めるのは建物の所有者です。
4分の3の賛成を集めるのは無理ではないですか
2つの点で変わっています。まず2026年4月から、4分の3の分母は出席者です。欠席者はカウントされません。そして光ファイバーの敷設は、多くの場合そもそも普通決議で足ります。過半数です。
普通決議か特別決議かは誰が決めるのですか
工事の内容によります。国土交通省の標準管理規約コメントが標準的な考え方を示していますが、最終的にはそのマンションの管理規約と、実際の工事内容で判断されます。理事会や管理会社に確認してください。
総会は年1回しかないのですか
令和5年度マンション総合調査では、「年に1回開催している」が89.9%です。ただし臨時総会という手段があります。区分所有者の5分の1以上が請求できます。
オンラインで参加しても出席に数えられますか
標準管理規約のコメントは、「議決権を行使することができる組合員がWEB会議システム等を用いて出席した場合は、定足数の算出において出席組合員に含まれると考えられる」としています。ただし議決権を行使できない傍聴人は含まれません。
賃貸でも同じ手続きが要りますか
要りません。賃貸で決めるのは建物の所有者です。総会も決議もありません。仲介会社か賃貸管理会社を通じて、所有者に話が届く形になります。
まとめ
- 賃貸は所有者が決めます。分譲は管理組合の総会が決めます
- 管理会社は決定機関ではありません。理事会も決議機関ではありません
- 2026年4月、4分の3の分母が「全区分所有者」から「出席者」に変わりました
- あわせて過半数の出席という定足数が置かれました
- 光ファイバーの敷設は、多くの場合「普通決議により実施可能」と国土交通省のコメントに書かれています
- 委任状と議決権行使書を含めた出席割合は平均88.5%。会場に来るのは24.6%です
- 通常総会は年1回が89.9%。招集通知は2週間前までです
- 臨時総会は、区分所有者の5分の1以上で請求できます
「マンションだから無理」は、2026年4月に少し変わりました。それでも自動的に何かが起きるわけではありません。動かすには、誰に何を渡すかを知っている必要があります。
まず自分のマンションが賃貸か分譲かを確認してください。分譲なら、管理規約の総会の条文を開いてください。そこに必要な賛成数が書かれています。
制度は変わります。この記事も改定のたびに更新し、末尾に修正履歴を残します。
前段にあたるマンションのネットが遅いときの記事と、工事ができない場合のホームルーターとの比較もあわせてご覧ください。
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